アレヤコレヤの散文 あたまのなかの引き出し ソレトこれがつながる

『キャガプシー』罪と鼠 2017年

劇団おぼんろの主宰であり劇作家、演出家、兼語り部(役者)

末原拓馬氏

彼の考えと想いから、今回の『キャガプシー』はチケット発売前も後もあらすじの一切を公表しませんでした。

 

終演後の彼の公式ブログにてそのことのこだわりが語られています

https://ameblo.jp/obonro/entry-12328672968.html

(前ブログに昼公演や、強風時の件についての記事あり)

 

 

『キャガプシー』の事を記せば、少なからずあらすじには触れてしまいます。

これから観る知る人も多いでしょう。悩みどころです。

 

 

しかしながら、500年残る古典ならば、シェイクスピア近松みたいに誰をもが知るお話だけど演じ語り継がれる。

ということで、ごめんなさい、物語の内容にそって今回の響きを記します。

 

以下、内容に触れます。

読み進めてくださる場合、その点にご留意お願いいたします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

劇団おぼんろ 所属役者(語り部)は5名

今回は4人での出演

 

登場人物順に紹介すると

トラワレ 藤井としもり

ネズミ  さひがしジュンペイ

ツミ   わかばやしめぐみ

ウナサレ 末原拓馬

 

4人ともそれぞれ愛すべきキャラクターなのですが、

わたしが超個人的に後味の苦さを感じた2名

ネズミとツミについて、特にツミについて記します。 

(戯曲は手元に無いので、2回観劇の記憶によります。正式な台詞や表記ではありません)

 

 

 

人間が住むあるどこかの世界

その社会の中で忌み嫌われる職業

“キャガプシー”人形を創る一家の娘 ツミ

 

 

忌み嫌われた職業のため父以外の人間と交流がなく、生きてゆく為、家業を継ぐ為 抑圧と重圧の下 修業の日々

他者と出会うこともなく 関わらず 関われず

ツミの笑い方は 乾いた乾いた笑い「ァハハハ ァハハハハ」

職業選択の自由がなく 恋愛も難しく

住む場所もこのキャガプシーの墓場だけ

 

ツミの子供心に刻まれた忌み嫌われる立場

全てを諦め

何がしたい 何処に行きたい 何になりたい

等と考えたこともないのでしょう

 

 

そこに現れたネズミという男

出会ったのはおぞましくも暴漢に父を殺され自分も眼を傷付けられた時

ネズミと自己紹介したその男はツミに“キャガプシー”を造れるなら造ってくれと懇願する

見習いのままだし今では“キャガプシー”に大切な色を塗ることが出来ないというツミにネズミは色は自分が塗ると言い出します

 

 

眼の痛みが治まらず真っ暗闇の恐怖の底に居るツミはネズミに頼みます

「いかないで、側にいて」

そして、二人の奇妙な共同生活がはじまります

 

 

ひっそりと人目に触れぬ場所で

こっそりおこなわれていた“キャガプシー”同士の壊し合い

ネズミはそれを“キャガプシーショー”と名付け

ボロでテントを建て、お客を呼び込み見世物としました

 

 

悪趣味な観客がグロテスクにショーを楽しむ

 

ツミは反対したのでしょう

キャガプシーの壊し合いを人に見せるのはダメだやめようよ

ネズミは聞き耳持ちません

 

 ~~~~

 

10年の月日が経ちました

今テントにいる“キャガプシー”は10年無敗の“トラワレ”

ツミの父が創った最後の“キャガプシー”が勝ち続けています

ネズミは遂にボロテントで行っていた“キャガプシーショー”をテレビで放送する契約を取り付けてきて上機嫌です

 

 

ツミはテレビ放送はダメだ、ネズミにやめようよと言います

またもや相手にされません

それどころか、放送日までにもう一体のキャガプシーを急いで造ってくれと頼まれる始末

「造ってくれるよな?」

「うん」

 

ネズミのコントロールが上手いのか、無意識の依存の弱みか

逆らえない、自分の意見を押し通せない ツミ

 

 

急いで間に合わせで仕上げた“キャガプシー”は出来上がって直ぐに失敗作といわれ

ネズミに“ウナサレ”と名付けられます

 

 

数ヶ月後の試合までの仕上げ期間で、ツミはウナサレと会話を楽しみ笑うようになります

 

 

ツミは“トラワレ”から初めて話し掛けられ

“ウナサレ”と壊し合いをしたくない“トラワレ”から

仕上途中の“ウナサレ”を壊してくれとお願いされます

 

 

ウナサレの影響で平常でいられなくなったトラワレ

人間のケガレで造られたキャガプシー

心根が美しいキャガプシー

色は心、ウナサレにその色を塗ったのはネズミ

 

 

壊し合うキャガプシーショーから“トラワレ”と逃げることを“ウナサレ”から知らされた真っ暗闇の更に真っ暗闇の底にいるツミは行かないでと懇願

“ウナサレ”から一緒に行こう といわれても

ここからは離れられない無理だと断るツミ

出ていく“ウナサレ”をツミはリモートで動けなくしてしまいます

 

 

「わたしもう無理アンタが居ないとダメなの」

エゴイスティックな行動に出るツミ

自分が創ったウナサレ

弟なのか、子供なのか、ペットなのか、友達なのか

どんなに手塩をかけて仕上げても

いずれにしろ、壊されるためにつくりだされるものたち

 

 

待ちぼうけの“トラワレ”一人を逃がすため山に行くツミ

そこでは、リモートで動けなくなった“トラワレ”が倒れています

そうしたのはネズミ

恐ろしい恐ろしい10年前の男の記憶

父をあやめ、眼を潰したその男

 

 

キャガプシーショーはやらせないとキッパリと発言するツミ

それの遥か上手を行く 百戦錬磨のネズミ

「片方がその気なら戦うさ」

しかも、なぜかウナサレは話せない?なんで

何が何でもこの二人のキャガプシーショーをテレビ中継させる為用意周到なネズミ

 

ネズミに気圧されたのか、何か考えがあるのか

キャガプシーショーのテレビ中継することに同意するツミ

 

 

ウナサレが生まれてからのこの数ヶ月で

どれだけ4人の気持ちが、それぞれと係わり合い

時に体当たりし、時に響き合い

目まぐるしく動いたことでしょう

 

初めての感情 知らなかった感情 淡い想い

伏せていた感情 押さえ込んでいた感情

知らんぷりを決め込んでいた感情

 

 

ショーがはじまり戦いは憎しみに駆られた“トラワレ”の勝利

ここで知らされる、ある事実 怒りに震える“トラワレ” 

ここからはツミがレフリーのもう一つのショーの始まり

豹変するネズミ そのネズミの告白

パートナーのツミも友達のトラワレをも利用して騙していたネズミ

ある人生を賭けた目的のため

 

 

トラワレがネズミに掛ける言葉(台詞)

みんな聞いてる

ツミも

テントの外にいる壊れたキャガプシー達も

私達も

 

 

行きたい場所へ二人で旅立つ“キャガプシー”

残されたネズミとツミ

ネズミの告白

「ケガレのせいじゃない俺は俺の意思で罪を犯した」

 

 

罰してもらえない、壊してもらえない、赦されてしまったネズミ

憎しみと怨みとある目的を糧に生きてきたキャガプシー

愛で赦されたネズミ

 

 

フラフラとつみの父親をあやめた場所へ

それを横目で見送る復讐しようとしていたツミ

青いペンキをそっと右頬に塗るネズミ

 

ツミのいつもの質問

ネズミの返事は……

 

 

ツミの全てを許した「そっか」じゃなくて、

目の前で見た聞いた美しいキャガプシーの希望の赦し

 

怨みつらみ、信頼への裏切り、都合よく使われた悔しさ

を咀嚼して 奥歯を噛み締めての「そっか」

 

 

眼を閉じて想像すれば

ネズミ色は銀色

黄土色は金色

 

ネズミが施したウナサレの色

きっと壊される最後のキャガプシーとの願いを込めた

心の色